触れるたびに心地よい、素材が語る安らぎ空間の物語
心地よい空間とは、ただ美しいだけでなく、五感に静かに響くものであると感じています。視覚はもちろん、耳に届く音、漂う香り、そして何より、触れるたびに安心感をもたらす「素材」の存在は、安らぎの質を大きく左右すると考えられます。今回は、そんな素材の感触にこだわり抜いた空間が、どのように生まれ、持ち主にどのような安らぎをもたらしているのか、その物語を深掘りしてまいります。
素材へのこだわりが育む、日々の安らぎ
写真に映るその空間は、派手な装飾があるわけではありません。しかし、一見しただけで伝わる穏やかな雰囲気は、使用されている一つひとつの素材から放たれているかのようです。床には無垢材、壁は少しマットな質感の塗り壁調、そしてソファには肌触りの良いリネン素材のカバーがかけられています。これらの素材が選ばれた背景には、単なるデザイン性だけでなく、実際にそこに暮らす人が触れた時に感じる心地よさへの深い配慮がありました。
この空間の持ち主は、以前の住まいではビニールクロスや合板フローリングといった一般的な建材に囲まれた生活を送っていたそうです。特に冬場の床の冷たさや、化学的な匂いが気になっていたとのこと。新しい住まいを作るにあたり、「触れた時に心が落ち着く、自然な素材に囲まれたい」という強い思いがあったと言います。
素材選びのエピソードと工夫
素材選びは簡単な道のりではなかったそうです。無垢材と一口に言っても、その種類は多岐にわたり、硬さ、木目、色合い、そしてメンテナンスの方法まで様々です。サンプルを取り寄せ、素足で踏んでみたり、日当たりの変化による見え方を確認したりと、時間をかけて吟味されました。「最終的にこのオーク材を選んだのは、ほどよい硬さがありながらも温かみを感じられ、経年変化でさらに深みが増すと知ったからです」とその理由を語ってくださいました。
壁の塗り壁調の仕上げも、素材感を重視した選択です。一般的なクロスに比べて費用はかかりますが、調湿効果が期待でき、何よりその手仕事による温かい凹凸のある表情に惹かれたと言います。職人さんと何度も打ち合わせを重ね、理想の質感と色合いを追求した、まさにこだわりの結晶です。
ソファカバーやカーテンに使用されているリネンは、使い始めは少し硬さを感じますが、洗うほどに柔らかく肌に馴染んでいく特性があります。その変化もまた、この空間で暮らすことの楽しみの一つになっているそうです。
素材がもたらす心の変化
これらの素材に囲まれた生活は、持ち主の心に穏やかな変化をもたらしています。朝、無垢材の床に素足が触れる時のひんやりしすぎない優しい感触、日中にリネンカーテン越しに入る柔らかな光と、風になびく時のさらりとした肌触り、夜、ソファでくつろぐ際に感じるカバーの柔らかさ。そうした日常の何気ない瞬間に、素材から伝わる温もりや安らぎを感じるようになったと言います。「ただそこに『ある』のではなく、触れるたびに『感じる』ことで、空間との繋がりが深まったように思います」とその体験を語ってくださいました。
素材感のある空間は、お手入れに少し手間がかかることもあります。無垢材の定期的なワックスがけや、デリケートな素材の洗濯などです。しかし、そうした手間も、素材と向き合う大切な時間となり、空間への愛着を一層深める機会となっているようです。メンテナンスを通じて素材の経年変化を肌で感じられることも、大きな喜びだとお話しくださいました。
空間と共にある物語
この心地よい空間は、単に素敵なインテリアで満たされているだけではありません。一つひとつの素材に込められた持ち主の思い、選び抜く過程での試行錯誤、そして日々の暮らしの中で素材と共に変化していく物語が、その空間全体を温かく包み込んでいます。触れるたびに心地よさを感じるこの空間は、持ち主にとってかけがえのない安らぎの場所となっています。
皆様の心地よい空間には、どのような素材が使われていますか。そして、その素材にまつわるエピソードや、触れるたびに感じる心地よさについて、ぜひお聞かせいただけますと幸いです。