心地よさを引き出す、照明選びと配置の秘訣
照明が空間に与える影響
私たちの「心地よい空間」を形作る要素は多岐にわたりますが、その中でも光、とりわけ照明が果たす役割は非常に大きいと考えられます。写真(ここでは読者の皆様が投稿された写真、を想定してください)に写し出された空間の空気感やそこから感じられる穏やかさは、多くの場合、選び抜かれた照明によって演出されているのではないでしょうか。
部屋全体を均一に明るくするだけでなく、特定の場所を照らしたり、陰影を作り出したりすることで、空間に奥行きやリズムが生まれ、私たちの心に語りかけるような安らぎが生まれます。照明は単に明るさを提供する道具ではなく、その空間の雰囲気やそこで過ごす「時間」の質そのものをデザインするものと言えるでしょう。
この空間が生まれた背景:照明との出会い
今回ご紹介する空間の持ち主の方もまた、照明の力に魅せられ、ご自身の安らぎの場所を作り上げられました。以前のお住まいでは、部屋全体を天井のシーリングライト一つで照らす、ごく一般的な照明環境だったとのことです。しかし、日々の暮らしの中で、どうも心が落ち着かない、リラックスしきれないと感じることが増えたそうです。特に夜、部屋の隅々まで均一に明るい光が行き渡っていることが、かえって空間に閉鎖感や緊張感をもたらしているように感じられたと言います。
そこで、この新しいお住まいでは、照明計画を空間づくりの重要な柱の一つと位置づけられました。ご自身の「心地よい」と感じる空間のイメージを掘り下げ、その実現のためにどのような光が必要かを考え始められたのです。
心地よさを引き出す照明選びと配置の秘訣
この空間の心地よさは、単一の強い光ではなく、複数の照明を組み合わせる「多灯分散照明」によって生み出されています。
まず、ベースとなるのは部屋全体を穏やかに照らす間接照明です。直接光源が見えないように配置された複数のフロアランプやテーブルランプが、壁や天井に光を反射させることで、柔らかくムラのない光が部屋全体を包み込みます。これにより、部屋の隅に強い影ができず、視覚的な圧迫感が軽減されます。
次に、読書や作業をするためのスポット的な明かりとして、手元を照らすスタンドライトが効果的に配置されています。これらのスタンドライトは、必要な場所に必要な明るさをもたらしつつ、それ以外の空間には穏やかな陰影を残します。光が必要な場所とそうでない場所を作ることで、空間にメリハリと落ち着きが生まれます。
さらに、この空間では、光源の色温度(光の色の暖かさ・冷たさを示す尺度で、ケルビンという単位で表されます)にもこだわりが見られます。リラックスしたいリビングエリアでは、暖かみのある電球色(2700K~3000K程度)の照明を中心に選び、心が安らぐ温かい光のトーンで統一されています。一方で、集中したいワークスペース(写真には写っていませんが)では、少し白色に近い光(3500K~4000K程度)を選ぶなど、用途に応じた光の使い分けもされています。
また、照明器具そのもののデザインも空間の雰囲気に合わせて選び抜かれています。主張しすぎず、空間に溶け込むようなシンプルで上質なデザインのものが多く、消灯時もインテリアの一部として美しい佇まいを保っています。
これらの照明計画は、一度に完成したものではなく、実際に住み始めてから少しずつ照明器具を増やしたり、配置を変えたりしながら、最も心地よいと感じるバランスを試行錯誤して見つけ出されたそうです。時には購入した照明がイメージと異なり、別のものに取り替えたり、高さを微調整するために工夫を凝らしたりといった、見えない努力や時間も費やされています。
照明が変えた日常
照明計画を見直したことで、この空間での過ごし方は大きく変わったと言います。夜、帰宅して部屋の明かりをつけた瞬間に、暖かく柔らかな光に包まれ、一日の疲れが癒されるのを感じるそうです。以前のように部屋全体がまぶしいほど明るい環境では感じられなかった、心からのリラックスが得られるようになりました。
多灯使いにより、その時の気分や用途に合わせて必要な照明だけをつけることができるため、例えば静かに音楽を聴きたい時は、手元のスタンドライトと小さな間接照明だけを灯すといった、よりパーソナルで心地よい空間を簡単に作り出せます。
また、照明を変えたことで、お気に入りの家具やアート作品がより魅力的に見えるようになったとも語られています。光と影が作り出すコントラストが、それぞれのものの質感や色を際立たせ、空間全体に豊かな表情をもたらしています。
まとめ:光が織りなす安らぎの空間
今回ご紹介した空間は、照明の選び方や配置に丁寧なこだわりを積み重ねることで、単なる部屋が、持ち主にとってかけがえのない安らぎのスポットへと昇華した好例と言えるでしょう。光の質、量、色、そして器具のデザインと配置。これらの要素一つ一つが、空間の雰囲気、そしてそこで過ごす人の心に深く影響を与えていることを改めて感じさせられます。
ご自身の安らぎの空間をさらに心地よくしたいとお考えでしたら、まずは照明を見直してみるのも良いかもしれません。一つの小さなテーブルランプを追加するだけでも、部屋の空気はきっと変化するはずです。
皆様の心地よい空間には、どのような光へのこだわりやエピソードがありますでしょうか。ぜひ、写真と共にお聞かせいただけると嬉しく思います。