心満たされるバスタイムを叶える、水回り空間づくりの物語
バスルームに求める安らぎの形
私たちの暮らしにおいて、バスルームは単に身体を清める場所以上の意味を持つことがあります。一日の始まりをリフレッシュして迎える場所であり、また、終わりには心身の疲れを洗い流し、深い安らぎを得るための大切なプライベート空間です。今回ご紹介するのは、そんなバスルームを、写真だけでは伝えきれない細やかなこだわりと物語によって、心満たされる安らぎの空間へと昇華させた事例です。
写真に映し出されたその空間は、抑制された色彩と自然素材の質感が調和し、穏やかな雰囲気を醸し出しています。一般的な機能性一辺倒のバスルームとは異なり、そこには持ち主の確かな意図と、日々の暮らしへの愛情が感じられます。この心地よい空間は、どのようにして生まれ、持ち主にとってどのような存在なのでしょうか。その背景にあるエピソードや工夫に迫ります。
物語が宿る水回り空間の工夫
この空間づくりが始まったのは、日々の忙しさの中で「心からリラックスできる自分だけの時間」を大切にしたい、という切実な願いからでした。特にバスタイムは、誰にも邪魔されない貴重な時間。この時間をより豊かにすることで、日々の活力を養えると考えたそうです。
最もこだわった点の一つは、空間全体の「質感」にあります。冷たさを感じさせない温かみのある床材選びから始まり、壁には調湿性のある素材や、光の当たり方によって表情を変えるタイルを採用されました。これらの素材は、見た目の美しさだけでなく、湿気がこもりやすいバスルームの環境を考慮した機能性も兼ね備えています。専門的な知識が必要となる素材選びにおいては、建材メーカーのショールームに何度も足を運び、実際にサンプルを触り、光の当たり方を確認するなど、時間をかけて納得のいくものを選ばれたと伺いました。
また、照明計画にも工夫が凝らされています。一般的な天井からの強いダウンライトだけでなく、壁面に柔らかな光を放つ間接照明を取り入れられています。これにより、昼間は自然光と組み合わせて明るく清潔な印象を保ちつつ、夜には湯船に浸かりながらリラックスできるよう、光のトーンを落とした落ち着いた空間を演出することが可能になっています。調光機能付きの照明を選んだことで、その日の気分や時間帯に合わせて最適な光環境を作り出せる点も、こだわり抜かれたポイントです。
空間づくりにおいて苦労されたのは、既存の構造にどこまで手を加えるかの判断だったそうです。理想を追求すれば構造体にまで及ぶ大規模な工事が必要になる可能性もありましたが、予算や工期との兼ね合いから、設備の位置や配管に大きな変更を加えず、内装材や照明、小物の配置で理想の空間に近づける方向性を選択されました。この制約の中で最大限の効果を引き出すために、インターネットや書籍で様々な事例を研究し、プロの意見も参考にしながら、粘り強くプランを練り上げられたとのことです。特に、限られたスペースでも圧迫感なく、かつ必要なものを手の届く場所に置けるような収納の工夫には、多くの試行錯誤があったと語ってくださいました。
安らぎをもたらすバスタイムの体験
完成したこの空間で、持ち主は心満たされるバスタイムを日々過ごされています。湯船に浸かり、柔らかい間接照明の下で静かに音楽を聴いたり、お気に入りの香りのアロマを焚いたりすることもあるそうです。壁の質感、床の感触、水の音、そして香りと視覚的な心地よさが相まって、五感を通して深いリラックス効果を得られているとお話しいただきました。
この空間がもたらす安らぎは、単に身体の疲れが取れるというだけでなく、心の平穏にも繋がっていると言います。忙しい日常から一時的に離れ、自分自身と向き合う静かな時間を持つことで、心の整理ができ、明日への活力が生まれる。このバスルームは、まさにそのための「充電スポット」であり、「心の避難場所」なのだそうです。空間づくりの過程での苦労や費やした時間が、今、日々の確かな安らぎとして実を結んでいることを実感されているご様子でした。
結び
バスルームという、とかく機能性が重視されがちな空間にも、これほどまでに深い物語とこだわり、そして日々の暮らしに寄り添う確かな安らぎを宿すことができるということを、今回の事例は教えてくれます。素材選びから照明、そして日々の使い方に至るまで、一つ一つの選択に込められた持ち主の想いが、この心地よい空間を紡ぎ出しています。
皆様の心地よい空間には、どのようなエピソードがありますか。または、どのような場所で、心身の安らぎを得ていらっしゃいますか。皆様の空間づくりに関する工夫や、そこでの特別な体験について、ぜひお聞かせいただければ幸いです。